【解説】韓国籍の帰化申請|韓国人が帰化申請する際に必要な書類一覧

「韓国籍から帰化する時ってどんな手続きが必要なんだろう?」
「特別永住者の帰化方法って、他の外国人と何か違うんだろうか?」
現在、韓国籍をお持ちの方は、帰化申請の手続き方法や提出書類について、多くの疑問を持っていらっしゃるのではないでしょうか?
結論から申し上げると、韓国籍の方のなかでも、「特別永住者」に該当する方は、帰化申請の書類が簡略化されています。そのため、一般の外国籍の方に比べると、帰化するための負担が比較的軽いと言えるでしょう。
一方、特別永住者ではない韓国籍の方は、通常の帰化書類を作成・取得する必要があります。注意しましょう。
いずれにしろ、帰化申請のために提出しなくてはいけない書類は膨大な量に上るため、いざというときに書類不備にならないよう、慎重に進めていく必要があります。
そこでこの記事では、韓国籍の方が帰化するための7つの帰化条件や提出しなければならない書類、一般的な外国籍の方の申請作業と比べて、どの点が異なっているのかについてご紹介していきます。
本記事でわかること |
①「特別永住者」の帰化書類は簡略化されている ②韓国籍の帰化に必要な7つの条件 ③韓国籍の帰化申請で用意すべき書類一覧 など |
この記事をお読みいただければ、韓国籍の方が帰化する際の帰化条件や書類内容について、詳しく知ることができます。
さっそく詳細を見ていきましょう。
1.「特別永住者」の帰化書類は簡略化されている

韓国籍の方で帰化を検討されている方は、「特別永住者」もしくは「一般永住者」の方が多いのではないでしょうか。そのなかでも「特別永住者」に該当する方は、帰化手続および提出しなければならない帰化書類が一部省略されるため、負担が軽くなります。
たとえば、他の外国籍の方なら取得しなければならない書類を免除されたり、帰化申請が受理されるまでの時間が、比較的短いことが挙げられます。
【特別永住者とは】 1991年(平成3年)に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(「入管特例法」とも呼ばれる)という法律のなかで定められた、在留資格のことを指します。この資格に保持する人を指す場合もあります。 |
2019年時点で見ると、「特別永住者」にあたる外国人は32万人近くいますが、そのうち「韓国・朝鮮」の国籍を持つ人は約98%を占めます。
そもそも「特別永住者」が生まれたきっかけは、1851年の「台湾統治」や1910年の「日韓併合」など、日本の植民地化が発端でした。
その後二度の大戦を経て、日本に居住するようになった台湾、韓国・朝鮮出身者は、1952年のサンフランシスコ講和条約によって、これまで保持していた「日本国籍」を失うことになりました。
その後、日本政府は「かつて日本国籍を持っていた外国人」を、通常の永住許可とは異なる「協定永住許可者」として、日本に滞在することを認めました。
こうして生まれたのが、現在の「特別永住者」です。
「特別永住者」は長く日本に居住しており、子や孫は日本生まれ・日本育ちのケースがほとんどです。
そのため、「帰化を受理するかしないか」という審査において、必要書類を簡単にしている経緯があるのです。
2.韓国籍の帰化申請に必要な7つの条件

それでは、韓国籍の方が帰化する際に求められる、国際法で定められた7つの帰化条件について見ていきましょう。
基本的には、韓国籍の方であっても、通常の外国籍の方に求められる帰化条件と同様です。
ただし、「特別永住者」については、条件が緩和されているものもあります。
さっそく見ていきましょう。
7つの帰化条件とは |
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条件1 |
【住所条件】日本に5年以上住んでいるか |
条件2 |
【能力条件】20歳以上かつ本国の年齢でも成人に達しているか |
条件3 |
【素行条件】素行が善良であるか |
条件4 |
【生計条件】日本で生計を立てられるか |
条件5 |
【重国籍防止条件】無国籍か、もしくは元の国籍喪失を了承できるか |
条件6 |
【思想条件】憲法を守って生活できるか |
条件7 |
【日本語能力条件】日常生活に支障のない日本語能力(読み・書き)を備えているか |
2-1.【住所条件】日本に5年以上住んでいるか
【「特別永住者」「一般永住者(日本に10年以上居住している人)」について】
①もともと日本で生まれ育った ②日本に長期間滞在している
という方がほとんどなため、【住所条件】についてはクリアできているケースが多いでしょう。 |
念のため、1つ目の条件を解説すると、日本に引き続き5年以上住んでいるかどうかが問われます。
こちらは、国籍法第5条第1項第1号に基づいた条件になります。
この期間は正社員・契約社員・派遣社員等として3年以上就労していることが条件となっているからです。
以下のような例外もあります! |
①日本に10年以上居住している方に限り、下記の条件でOKとされる場合があります。 ★特別永住者・一般永住者が該当します
就労期間3年以上→就労期間1年以上
②日本と特別な関係を持つ外国人(たとえば日本で生まれた者、日本人の配偶者、日本人の子、かつて日本人であった者等で、一定の者)については、上記の帰化の条件を一部緩和しています(国籍法第6条から第8条まで)。
【緩和条件1】 日本人だった者の子(養子を除く)で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する場合。
【緩和条件2】 日本で生まれ、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有しているもの。又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの。 ★特別永住者が該当します
【緩和条件3】 引き続き10年以上日本に居所を有するもの。 ★特別永住者・一般永住者が該当します
【緩和条件4】 日本人の配偶者で引き続き3年以上日本にいて、現在も日本に住んでいるもの。
【緩和条件5】 日本人の配偶者で婚姻の日から3年経過し、引き続き1年以上日本に住んでいるもの。
【緩和条件6】 日本人の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの。
【緩和条件7】 日本人の養子になり、引続き1年以上日本にいて、養子縁組の時、本国法により未成年であったもの。日本の国籍を失ったもの(日本に帰化した、後日本の国籍を失ったものを除く。)で日本に住所を有するもの。
【緩和条件8】 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの |
また、下記の条件に当てはまる方は要注意です。
上記のような場合は、日本に在留した期間として「引き続き」と見なしてもらえない可能性があります。
そのため、日本出国した時点で在留期間は振出しに戻り、またゼロから数え始めなければなりません。
2-2.【能力条件】20歳以上かつ本国の年齢でも成人に達しているか
【「特別永住者」「一般永住者(日本に10年以上居住している人)」について】
申請者の年齢が20歳以上であれば、問題ありません。 |
申請者の年齢が20歳以上であることが条件となります。
さらに申請者の本国の法律で、成人年齢に達しているかどうかも問われます。
こちらは、国籍法第5条第1項第2号に基づいた条件になります。
なお未成年者が両親と共に帰化する場合は、条件を満たしていなくとも一緒に帰化の手続きを取ることができます。
平成4年より20歳→18歳へ! |
令和4年(2022年)4月1日から、年齢制限が下記のように変更になります。
「20歳以上」→「18歳以上」 |
2-3.【素行条件】素行が善良であるか
素行が善良であることが必要です。素行が善良であるかどうかは,犯罪歴の有無や態様,納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮して,通常人を基準として,社会通念によって判断されることとなります。
法務省より引用 |
【「特別永住者」「一般永住者(日本に10年以上居住している人)」について】
この項目は、たとえ「特別永住者」「一般永住者」であっても、厳しく審査されるポイントです。 下記に「帰化不受理」となるケースについてまとめましたので、参考にしてみてください。 |
素行に問題がないかどうかを判断する項目です。
こちらは、国籍法第5条第1項第3号に基づいた条件になります。
この項目で見られるのは、犯罪歴や納税状況、交通違反など社会に迷惑をかけていないかどうかなどです。総合的に状況を見て、社会通念に照らし合わせながら全体的に判断します。
たとえば、以下のような場合は「素行に問題あり」と判断され、帰化申請がスムーズに進みません。
【素行に問題があると判断される事例①】
住民税をきちんと支払っていないと、帰化審査が却下される可能性があります。
【素行に問題があると判断される事例①】
会社経営者や個人事業主の方は、法人税や個人事業税などの税金をきちんと支払っていないと、帰化申請 の審査がスムーズに通らなくなる恐れがあります。
【素行に問題があると判断される事例③】 年金関連の支払いを、おろそかにしていないかどうかも、審査基準の対象となります。 サラリーマンの方は「厚生年金」を、それ以外の方は「国民年金」を毎月きちんと収める必要があります。 支払いが滞っている場合は、今からでも直近1年間分を支払い、それに対する領収証を提出すれば、帰化要件を満たすと判断される場合があります。
また会社経営者の方は、経営する会社が厚生年金保険に加入し、保険料を支払っているかどうかが重要です。その際、代表者である会社経営者の方も厚生年金保険に加入し、自らも保険料を払っていることが帰化条件の1つとなります。
【素行に問題があると判断される事例④】 現時点から過去5年分さかのぼった、交通違反の経歴を調査されます。 比較的軽度の違反(駐車違反・シートベルト未着用など)であれば、5回程度までなら帰化申請に影響を与えることはないでしょう。
【素行に問題があると判断される事例⑤】 過去に前科・犯罪歴がある場合は、帰化審査が通らない場合があります。
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2-4.【生計条件】日本で生計を立てられるか
生活に困るようなことがなく,日本で暮らしていけることが必要です。この条件は生計を一つにする親族単位で判断されますので,申請者自身に収入がなくても,配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば,この条件を満たすこととなります。
法務省より引用 |
【「特別永住者」「一般永住者(日本に10年以上居住している人)」について】
こちらの項目も、厳しく審査されるポイントです。 下記に「帰化不受理」となるケースについてまとめましたので、参考にしてみてください。 |
4つ目の帰化申請の条件として、万が一日本で生活することになった際、経済的に自立しきちんと安定した暮らしができるかどうかを判断されます。
こちらは、国籍法第5条第1項第4号に基づいた条件になります。
こちらは、申請者本人だけでなく、生計を一つにする親族なども考慮に入れるため、申請者本人に収入がなくても、その分を別のご家族に収入や資産があったり、収入につながる技能で安定的に生活できることがわかれば大丈夫です。
ここで見られるのは、申請者本人や同居するご家族の世帯収入になります。経済的にきちんとバランスの取れた状況であることがポイントとなります。
たとえば、以下のような場合は「日本で生計を立てるのが困難である」と判断され、帰化申請がスムーズに進みません。
【日本で生計を立てるのが難しいと判断される事例①】 安定した仕事に就いているかどうかは、厳しくチェックされます。 失業している方は少しでも帰化審査が通るように、まずは就職をすることが先決です。 給料の目安額ですが、1か月あたり手取り18万円以上得られれば、生計の要件を満たしていると判断される でしょう。
【日本で生計を立てるのが難しいと判断される事例②】 自己破産した経験があるかどうかも、帰化審査の重要なポイントになります。 ただし、自己破産したことがあっても、破産手続き開始決定日から7年以上過ぎていれば大丈夫です。 7年未満であるならば、不許可となるケースがあります。
【日本で生計を立てるのが難しいと判断される事例③】 借金についても、帰化を認可するかどうかの判断ポイントなります。 万が一借金をしていたとしても、滞納や返済の遅延がなければ問題ありません。
ただし、借金の返済額と安定して得られる収入額とのバランスが極端に崩れている場合は、要注意です。
【日本で生計を立てるのが難しいと判断される事例④】 国民年金の支払い免除や納付猶予を申請している方は、帰化申請が不許可になる可能性があります。 そのため帰化申請をする際は、保険料免除や納付猶予の申請をしていないことが必須条件となります。
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2-5.【重国籍防止条件】無国籍か、もしくは元の国籍喪失を了承できるか
帰化しようとする方は,無国籍であるか,原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。なお,例外として,本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合については,この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります。
法務省より引用 |
【「特別永住者」「一般永住者(日本に10年以上居住している人)」について】
帰化して日本国籍を得ると同時に、韓国籍から離脱することはすでに理解されていると思われます。 そのため、この項目に関しては、心配されることはないでしょう。 |
念のため解説すると、こちらは二重国籍を防止するための条件です。
こちらは、国籍法第5条第1項第5号に基づいています。
帰化によって日本国籍を取得した際には、これまで保持していた本国の国籍を喪失することを条件としています。
以下のような例外もあります! |
外国籍の方が自分の意志で本国の国籍を失うことができない場合には、その方が日本国民との親族関係 または境遇につき、特別の事情があると認められる時は、上記条件を満たしていなくても、帰化を許可 される場合があります。
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2-6.【思想条件】憲法を守って生活できるか
【「特別永住者」「一般永住者(日本に10年以上居住している人)」について】
以下に該当する方でなければ、特に気にする必要はないでしょう。
例)暴力団関係者や右翼関係者、テロリスト集団や反社会勢力関係者など |
帰化条件6つ目の「憲法遵守条件」とは、日本の政府を暴力で破壊することを計画したり、主張する者、またはそのような団体を結成したり、加入しているような者は帰化できないした条件です。
たとえば、暴力団関係者や右翼関係者、テロリスト集団や反社会勢力関係者などが該当します。
こちらは、国籍法第5条第1項第6号に基づいた条件になります。
2-7.【日本語能力条件】日常生活に支障のない日本語能力(読み・書き)を備えているか
【「特別永住者」「一般永住者(日本に10年以上居住している人)」について】
日本語能力については、まったくといって良いほど問題ありません。 なぜなら、「特別永住者」「一般永住者」の方は、日本に長く滞在したり、そもそも日本で生まれ育った方が多いからです。 日常生活が送れるぐらいの日本語能力は、十分身に付けていることでしょう。 |
念のため解説すると、通常、帰化する際に必要な条件として「国籍法」で定められているのは上記6条件ですが、法務省ではこの他にも、日本に生活基盤を置く上で毎日の暮らしに支障のないレベルの日本語能力(読み・書き)も求めています。
具体的な日本語レベルが気になるところですが、国としては日本国民の義務教育を終えたぐらいのレベル、つまり15歳程度の能力があれば望ましいと考えています。
3.韓国籍の帰化申請で用意すべき書類一覧

韓国籍の帰化申請で、もっとも困難なことの1つが、提出書類の作成・収集作業です。
なぜなら、提出書類が驚くほど大量であることに加え、本国から取り寄せなければならない書類等も含まれているからです。
一般的な帰化申請のための必要書類は、下記のとおりです。
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帰化申請に必要な提出書類一覧 |
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□ |
1 |
帰化許可申請書(申請者の写真が必要) |
□ |
2 |
親族の概要を記載した書類 |
□ |
3 |
帰化の動機書 |
□ |
4 |
履歴書 |
□ |
5 |
生計の概要を記載した書類 |
□ |
6 |
事業の概要を記載した書類 |
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7 |
住民票の写し |
□ |
8 |
国籍を証明する書類 |
□ |
9 |
親族関係を証明する書類 |
□ |
10 |
納税を証明する書類 |
□ |
11 |
収入を証明する書類 |
このうち、「7.国籍を証明する書類」や「8.親族関係を証明する書類」など、国籍や身分関係を証明する書面について、本国の行政や役所で発行したものを提出する必要があります。
3-1.「特別永住者」が緩和されている書類条件
●「帰化の動機書」
→原則として提出は免除されています。
●預貯金現在高証明書又は預貯金通帳のコピー
→「生計の概要を記載した書類」の添付資料として提出義務がありますが、「特別永住者」に限り、提出は免除されています。
●「在勤及び給与証明書」
→「収入を証明する書類」の添付資料として提出しますが、「特別永住者」は以下の通り緩和されています。
【本来】在職証明書+源泉徴収票など
【緩和条件】「社員証のコピー」+「給与明細のコピー」で代替可能
●「最終学歴の卒業証書」
→原則として提出は免除されています。
※ただし、この措置は「東京法務局」におけるものです。その他地方法務局については事前にお問い合わせすることをおすすめします。
上記のような緩和条件は常に一定ではなく、制度を変更してきた経緯があります。
そのため、ご自分が帰化申請する際は、事前に必ず緩和条件を確認してみることをおすすめします。
3-2.韓国籍の方が帰化申請で必要な書類一覧
帰化申請の必要書類をどこから入手するかについては、以下3パターンに分けて考えることができます。
①自分で作成する書類 ②取り寄せる書類(役所・本国などから) ③自分で持っている書類からの写し |
この章では、それぞれの必要書類の取得方法を、この3パターンに合わせて見ていくことにしましょう。
本国の書類は日本にある「韓国領事館」でも取得できます! |
韓国から取り寄せる書類については、以下どちらかで取り寄せが可能です。
①日本にある韓国領事館 ②韓国の本籍地のある役所
韓国領事館では、「郵送申請」「代理申請」も受け付けているので、遠方にお住いの場合でも書類の取得が可能です。 |